さまざまな醸造方法
・亜硫酸(二酸化硫黄)
ワインの酸化を防ぐ目的で亜硫酸が添加される。また亜硫酸には静菌作用がある。
・乳酸菌
ワイン用の酵母は高い糖濃度と低いpHに耐性を持つことが必要とされる。
・マロラクティック発酵Malo lactic fermentation=MLF
リンゴ酸が乳酸菌の働きによって乳酸と炭酸ガスに分解される発酵。
これによりワインの酸味がやわらげられ、まろやかになること。
ダイアセチルなどの香りにより、複雑性を増し、豊潤な香味を形成する。
リンゴ酸が少なくなることにより微生物学的に安定する。
・マセラシオン・カルボニックMacerration carbonique
フランス語の直訳は『二酸化炭素浸漬法』
通常のワインは収穫後、破砕して攪拌するなどの作業をしますが、
マセラシオンカルボニックはそれをしない。
収穫したブドウを破砕せずにそのままタンクの中で放置し、
タンク内に二酸化炭素を充満させる。
二酸化炭素は酸素よりも比重が重い(空気1に対して二酸化炭素1.53)
のでタンクの下部にたまる。
これで理論上ブドウの果実は酸素との接触がなくなります。
酸素との接触がなくなることで酸化が抑制され、
その結果フルーティーなワインに仕上がる。
理論上と言ったのは一般的に空気などの気体は個体と違って
常に流動しているので通常では二酸化炭素単体では下部にたまりません。
そこで人工的に二酸化炭素を注入します。
ブドウに接する空気は人工的に注入した二酸化炭素か、
あるいはブドウの発酵によって自然に生まれた
二酸化炭素が充満されている状態になります。
二酸化炭素が充満されているとタンク内は
一番下がブドウ、真中に炭酸ガス、一番上が酸素と言う三層構造になる。
酸化がストップすれば劣化は抑制され、ワインにフレッシュさがもたらされます。
この醸造法が使われている代表はボージョレです。
・シュールリーSur lie…直訳は『澱の上』
澱引きせずにタンク内に澱を沈めた状態で、
ワインの上澄みだけを取り出して瓶詰めする。
アミノ酸などの旨み成分が抽出され味わいのある白ワインになる。
フランスのロワール地方などで採用される特殊な方法で、
若々しく、さわやかでフルーティーな白ワインに仕上がります。
・スキンコンタクトSkin contact,マセラシオン・ペリキュレールMaceration pelliculaire
圧搾前に一定の時間、圧搾機やタンクの中で果皮を果汁に漬け込む工程。
果汁に白ブドウの品種特性を濃厚に与えるために行う。
果皮からの成分抽出を意図的に行うことで果汁に複雑味を持たせることが出来る。
・セニエSaignee
【ロゼの場合】
果醪から液体部分を分離する操作をいう。
発酵前にセニエを行う場合は薄め、発酵が始まってからセニエを行う場合は
濃いめのロゼワインとなる。
【赤ワインの場合】
発酵開始前の果醪の液体部分の一部をタンクから抜き取る操作をいう。
果皮・果肉・種子の割合を相対的に高めるため、
ワインの凝縮感を向上させることを目的として行う。
・マセラシオン・ア・ショーMaceration a chaud
果醪に熱を加える赤ワインの醸造方法。ショーは熱いの意味。
①Maceration prefermentaire a chaud=MPC
破砕後の果醪に熱を加えて70℃前後にして、
果皮からアントシアニン色素や種子中のタンニンを抽出し、
圧搾後は果汁を常温まで下げてから発酵させる醸造方法。
ワインの色は色素が良く抽出されて、
タンニン分は少なめで軽めの赤ワインとなる。
南フランスのグルナッシに適した方法。
②Macetation finale a chaud=MFC
発酵終了後、果醪中に果皮と種子が残っている状態で
温度を30~40℃まで上げ、一定期間保持する方法。
果皮や種子からのタンニンの抽出を強めることが出来る。
・コールドマセラシオンCold maceration/Maceration prefermentaire a froid=MPF
発酵前の果醪に亜硫酸や酵素を添加して低温(5~15℃)に保ちながら
数日間発酵が起きないようにして保持する方法。
色調とアロマが高く、程よいタンニンを含むワインを得るための技法。
果醪が参加しないようにドライアイスを果醪の表面に撒いたり
炭酸ガスをタンク内に充満させる。
バクテリアの増殖を防ぐため、
果醪液をタンクの下部から引き抜いて果醪の表面にかける。
・クリオエキストラクシオンCryo extraction
氷果仕込ともよばれる。
ブドウを-7℃に冷凍し、凍結果実を圧搾する。
高糖度の果汁を発酵させる白ワインの醸造方法。
・逆浸透膜フィルターによる濃縮
分子量の大きさで振るい分ける方法。
浸透膜を使って果汁中の水分を除去し濃縮する方法で
濃縮のために温度を上げる必要がないため、
色素や糖分や有機酸やタンニンなどの成分が
変性しないのがこの技法のメリットとしてあげられる。
・常温減圧濃縮
真空容器内で果醪を減圧状態にすると、
常温で果醪から水分が蒸発し、水を回収できる。
低温の状態での濃縮の為、
品質の劣化が抑えられることがメリットとしてあげられる。
・ミクロオキシジェナシオンMicro oxygenation
ミクロの酸化の意味。
赤ワインの発酵中、貯蔵中にセラミック製の筒を通して
細かい泡の酸素を吹き込む製法。
赤ワイン内のポリフェノールの酸化と重結合を促すことを目的として、
口当たりが柔らかく早期に飲用可能となる。
長熟ワインには向かないがブドウ品種によっては
強烈な渋みをやわらげるために開発された方法。
・ノンフィルトラシオン
瓶詰めにあたり、濾過の工程を行っていないこと。
・ノンコラージュ
コラージュ(清澄)を行っていないこと。